海外スタートアップ 最高のPitchdeck10選

AirbnbやRipplingなど大きく成功した企業10社のピッチデックを厳選して検証します。UberやTinderのような王道のデックはもちろん、動画活用や文章メモのみなど、ひと味違うピッチ資料も紹介します。投資家との有意義な議論を引き出す資料作成の参考になれば幸いです。
田中 洸輝 (IncubateFund VC) 2025.02.27
誰でも

以下の10個のPitchdeckは、各企業の強みやビジネスモデルによって、プレゼンで押し出したい部分は異なることから、かなり濃淡があります。あくまで作成時の参考として、ご自身のPitchに応用できる部分を見極めていただければと思います。

  • Airbnb:明確なPSF(Problem Solution Fit)を示した好例

  • Uber:既存産業(タクシー)との明確な差別化と将来価値を示した好例

  • Tinder:共感を抱かせるストーリー性を重視したプレゼンの好例

  • Linkedin:ビジネスのKSF(成功要因)と高いMOAT(参入障壁)を示した好例

  • BuzzFeed:プロダクトイメージが湧くスライドを重点的に活用した好例

  • DropBox:「Why Now」今がこのビジネスを始める最適なタイミングであることを示した好例

  • Shopify:ビジネスの全体コンセプトや数値データを視覚的にわかりやすく示した好例

  • Snapchat:明確なICP(初期顧客層)と顧客思考を伝えた好例

  • Perplexity:プロダクトの利用動画を活用した好例

  • Rippling:スライドなし。徹底的に言語化し、文章を磨いた好例

1: Airbnb

明確なPSF(Problem Solution Fit)を示した好例

Airbnbのピッチデッキは、短く簡潔でありながら効果的なPitch Deckの好例です。多くのVC投資家は質疑応答により時間を割きたいと考えており、Pitch自体は5分から長くても10分以内に収めるのが理想です。Airbnbは、14枚のスライドで要点をしっかりまとめています。

  • 業界:民泊マッチングサービス

  • 年:2008年

  • ステージ:シード

  • 調達額:60万ド

重要なポイント:AirbnbのPitch Deckが良い点は、自分たちのビジネスを徹底的にシンプルかつ洗練されたかたちで示している点です。文字が少なく簡潔なため、収益の仕組み、市場規模、予想利益などもひと目でわかります。可能であれば、自社のビジネスをなるべくシンプルに資料化し、口頭説明で補足するとよいと思います。
本編は絞って、質疑応答用にAppendixで多く資料を用意しておくことも効果的です。

2: Uber

既存産業(タクシー)との明確な差別化と将来価値を示した好例

UberのPitch Deckは、現代においても学ぶべき点が多い優秀な例とされています。この資料は「UberCab」と呼ばれていた創業初期の投資家向け資料です。

  • 業界:交通/ライドシェア

  • 年:2008年

  • ステージ:シード

  • 調達額:20万ドル

重要なポイント:UberのPitch Deckはデザイン要素はあまり重視していませんが、既存産業および、既存の解決策(タクシーや高級ハイヤー)が以下に不便で非効率的であり、顧客は潜在的な不満を感じているという市場のギャップを投資家に納得させることに成功しています。その上で、タクシーやハイヤーとの明確な差別化を示し、将来価値を大成功した場合から最悪の場合まで3パターンを提示することで、投資家の不安を低減している好例です。ちなみに、Uberはこの想定していた大成功パターンを遥かに上回る規模で成功を収めています。

3: Tinder

共感を抱かせるストーリー性を重視したプレゼンの好例

Tinder(旧Match Box)のPitch Deckは、恋愛マッチングアプリというビジネスだったこともあり、投資家に対して顧客目線での共感を促すべく、ストーリー重視の構成になっています。

  • 業界:マッチングアプリ

  • 年:2016年

  • ステージ:シード

  • 調達額:5000万ドル

重要なポイント:Tinderは、Pitch Deckの中で、架空の「Matt」というユーザーを登場させ、女の子に声を掛けたいけど拒否されるのが怖い問題とそれを解決するマッチングアプリという自然な流れで説明をしています。投資家に直感的な理解をもたらす手法として非常に参考になります。
 デザインは現代基準ではやや古く見えるかもしれませんが、物語論調の構成は特にC向けビジネスを展開する起業家の方に非常に参考になりそうです。  

4: LinkedIn

ビジネスのKSF(成功要因)と高いMOAT(参入障壁)を示した好例

LinkedInのピッチデッキは、シリーズBに入ってきていることもあり、かなり詳細に作成されています。自分たちのビジネスが成功する上で最も重要な要素は何か(KSF)、そして自分たちが既に市場でリーディングカンパニーであり、高い参入障壁(MOAT)を築いている事を徹底的に示しています。

  • 業界:ビジネスSNS

  • 年:2004年

  • ステージ:シリーズB

  • 調達額:1000万ドル

重要なポイント:LinkedInのPitch Deckが優れているのは、これからの時代は「Internet2.0」であると示し、自分たちのビジネスが勝者総取り(Winner takes All)で大きなネットワーク効果を構築する事が最も重要な成功要因であることを他業界のスタートアップ(ebaY、PayPal、Google)のアナロジーで説明している点です。つまり、そのために最速で最大のネットワーク効果をつくった企業がこの市場を独占するという勝利確定条件を示し、現時点で最もそこに到達する可能性が高い勝ち馬は自分たちであるという説明をしています。マッチングプラットフォームなどネットワーク効果を生むビジネスを展開する起業家の方は必見です。

5: BuzzFeed

プロダクトイメージが湧くスライドを重点的に活用した好例

BuzzFeedのPitch Deckは端的に要点を押さえており、現在の状況や今後の計画を非常に簡潔に提示しています。また、プロダクトイメージが湧くプロダクト画面の画像を多く採用しています。

  • 業界:デジタルメディア

  • 年:2008年

  • ステージ:シリーズA

  • 調達額:350万ドル

重要なポイント:BuzzFeedは、冒頭で自分たちが今どんな状況にいるのか、今後どうなっていきたいのかを簡潔にわかりやすく説明しています。その上で、具体的にプロダクトをどのように変化させたいか、どんなビジネスなのかを「見せる」ことに成功しています。視覚的要素をうまく取り入れることで、わかりやすく具体的なイメージを投資家と共有できます。オンラインメディアという比較的わかりやすいビジネスであり、競合も多いため、視覚的なプレゼンに振り切ったのだろうと推測してますが、ビジネスによっては本編資料でここまでプロダクト画像を組み込むかは相談ですが、Appendixには必ずプロダクト画像を入れておくと良いかもしれません。

6: Dropbox

「Why Now」今がこのビジネスを始める最適なタイミングであることを示した好例

Dropboxは、当時としては先進的なアイデアだったクラウドストレージのビジネスを投資家に納得させ、120万ドルの出資を引き出すことに成功しました。その要因は、まだ存在していない新市場のビジネスが「なぜ今」なら立ち上がるのかを明快に説明出来たからです。

  • 業界:クラウドストレージ

  • 年:2007年

  • ステージ:プレシード

  • 調達額:120万ドル

重要なポイント:具体的な課題やその課題が解決された完璧な未来を冒頭で定義した上で、「Why now(なぜ今なのか)」がとても明確です。製品がこのタイミングで需要に合致する理由を、市場の状況や技術の進化と絡めて解説しています。新興市場や新しい形のビジネスに挑戦する起業家の方は、特にこの「Why Now」を明確に説明できるスライドを作成することをおすすめします。

7: Shopify

ビジネスの全体コンセプトや数値データを視覚的にわかりやすく示した好例

ShopifyのPitch Deckは冒頭に自分たちのビジネスのコンセプトを視覚的に示しており、非常にわかりやすいです。また、数値データの見せ方が非常に巧みで、情報量があるにもかかわらず、わかりやすく工夫されています。

  • 業界:Eコマース

  • 年:2016年

  • ステージ:レイトステージ

  • 調達額:6600万ドル

重要なポイント:ShopifyのこのPitch Deckはレイターステージなこともあり、かなり洗練されています。冒頭のビジネスの全体コンセプトを非常に巧みに視覚化しており、見ただけで理解できます。複雑な製品やビジネスモデルを扱う場合は、このような視覚的手法は効果的です。数値の使い方、グラフの見せ方や成長戦略に至るまで視覚的にわかりやすく、多くの起業家の方に参考になります。

8: Snapchat

明確なICP(初期顧客層)と顧客思考を伝えた好例

SnapchaのPitchdeckは端的な表現で、視覚的にもわかりやすく伝えています。C(若者)向けサービスということもあり、丁寧に顧客像や顧客の欲望を投資家が理解できるように記載しています。

  • 業界:SNS

  • 年:2013年

  • ステージ:シード

  • 調達額:5000万ドル

重要なポイント:Snapchatは、投資家の多くと異なる年齢層のユーザー層(若年層)にフォーカスしているおり、現代の若者の思考や欲望をなぜSnapchatなら満たすことができるかを説明しています。投資家にとっては「なぜこの顧客層で勝てるのか」を理解できることが重要なので、自社の強みを際立たせるうえでも有効な手法です。一方で、C向けはどうしても投資家サイドが投資の確信を持つためにトラクションがより重要になる領域であり、Snapchatはシードの時点ですさまじいトラクションを保有していることが投資に繋がっている気もします。これを言うと元も子もないですが、C向けサービスの起業家の方は、まずはとにかくトラクションを伸ばすことが重要です。

9: Perplexity AI

プロダクトの利用動画を活用した好例

Perplexity AIは2024年に資金調達を行い、動画を駆使したスライドで注目を集めました。

  • 業界:人工知能

  • 年:2024年

  • ステージ:シリーズB

  • 調達額:7360万ドル

重要なポイント:Perplexity AIは、動画を用いてプロダクトの使い方や価値を「見せる」ことに成功しています。人々が過去にあまり体験したことのないユーザー体験を提供する製品の場合、動画を取り入れることで投資家に直感的に理解してもらえる可能性が高まります。

10: Rippling 

スライドなし。徹底的に言語化し、文章を磨いた好例

Ripplingは通常のスライドをほとんど作成せず、ワードの文章ベースで投資家とMTGをした稀有な例です。徹底的に言語化し、投資家が社内MTGで非常に説明しやすい形になっています。

  • 業界:HR SaaS

  • 年:2019年

  • ステージ:シリーズA

  • 調達額:4,500万ドル

重要なポイント:Pitchdeckを作成せずに詳細に言語化しているため、投資家との認識相違や質疑応答のラリー回数を低減できます。個人的には非常にわかりやすく、こういった形はありがたいです。投資家も社内の投資委員会用の資料を作成しやすいでしょう。一方で、スライドを作成しないことは投資家から興味を持ってもらえていない段階では、文章を読んですらもらえないリスクもあるため、かなり強気な戦略でもあります。全起業家の方ができることではありませんが、スライドを作る前に一通り自分の主張を言語化することは非常に有意義ですし、Pitchdeckで興味を持ってもらった後に、こういった文章を投資家に送るのは非常に有効だと感じます。

「最高のピッチデッキ」だけでは不十分

ここまで多くの事例を挙げてきましたが、実のところ「魅力的なスライドを作る」こと自体は難しい作業ではないでしょう。

本当に大変なのは、自社の市場に関心を持ち、自分たちと相性の良い投資家を見つけること、そしてその投資家を仲間に引き込むことです。Pitchdeckはアイデアを洗練し、第一印象をよくするために非常に大切ですが、投資家を本当に納得させるためにはピッチ後の質疑応答や議論の質が最も大切です。その準備として、Ripplingのように自分たちの主張をすべて言語化しておくことはとてもおすすめです。

投資家とのMTGはよくテニスに例えられます。現代テニスと同様に、最初のPitch=サーブだけで決めることは非常に難しくなっています。投資家の質問=リターンボールにどれだけ良い回答が返せるかが重要です。また、建設的な議論ができるかもとても重要です。

スライドの話をしてきたわけですが、スライド作成にかかる時間をなるべく減らし、デザイン作業に没頭しすぎず、ビジネス全体の戦略や投資家とのコミュニケーションに集中することを強くお勧めします。そのために上記のようなデザインの引き出しを増やしておくと良いかもしれません。

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