ソフトウェアが、コンテンツ化する未来

コードを書く世界は終わり、直感的な指示で瞬時にアプリが作れる時代が来ます。その未来では、ソフトウェアは動画やSNS投稿と同じ「個人の表現」へと進化していくでしょう。その時どんなビジネスがあり得るのか検討してみました。
田中 洸輝 (IncubateFund VC) 2025.03.15
誰でも

「ソフトウェアの終焉」ではなく、「ソフトウェアがコンテンツ化」する世界

1. ソフトウェアの開発が民主化される世界

 ChatGPTや生成系AI(LLM)の進化によって、「Software is eating the world」と言われた時代は終わりを迎えつつあり、「ソフトウェアの終焉」という表現が多く用いられるようになっています。

Lovable や Bolt などのAIを活用した簡単にアプリ開発できるプラットフォームは急激な成長を実現しており、これらはそれぞれたった3か月で約25億円のARR、たった2か月で約30億円のARRを達成しました。彼らの解約率が実際どの程度になるかは誰にもわかりませんが、少なくとも新しくて価値のあることに取り組まなければ、このような数字には到達できません。

今後、プログラミングの敷居はもっともっと大幅に下がり、誰でも簡単に高度なアプリケーションを作れる時代がもうすぐ到来するでしょう。

ちなみに、AIを活用した新しいプログラミングのアプローチは「Vibe coding」と呼ばれています。この概念は、従来の厳密なコード記述に頼るプログラミングとは異なり、AIツール(特にLLM)を最大限に活用し、直感的かつ自然言語ベースでソフトウェア開発を行う手法を表しています。

AIに対して「何をしたいか」を言葉で伝え、AIがその意図を解釈してコードを生成するため、「完全にVibe(雰囲気)に身を任せ、指数関数的な可能性を受け入れ、コードの存在すら忘れる」ような体験と表現しています。つまり、開発者が技術的な詳細よりもアイデアに集中し、AIがその実装を担うというスタイルです。

「ソフトウェアの終焉」という表現は、「ソフトウェア開発がエンジニアの専売特許ではなくなり、あらゆる人の“創作活動”へ変容する」ことを示唆しています。

実際、絵具とキャンバスの普及が絵画制作を民主化し、紙とペンと印刷技術の普及が書物制作を民主化し、カメラや編集技術の普及が映像制作を民主化して、爆発的にコンテンツが増えたのと同じように、10~20年後の世界ではコード書くことが不要になり、あらゆる人にソフトウェア開発の技術が普及・民主化して、ソフトウェアの量と多様性が桁違いになっているでしょう。

2. “使い捨てアプリ”や“マイクロスタートアップ”の台頭

AIで作成されたソフトウェアは、1回限りの使用で使い捨てにすることができます。なぜなら作成コストが非常に低いため、はるかに小規模な市場や1回だけの利用でも利益を上げられるからです。

以下の通り、最近数名~数十名でユニコーン企業が出来るという話がよく話題になります。

  • Cursor: $100M ARR に 21ヶ月(20人) 

  • Eleven Labs: $100M ARR に 2年(50人) 

  • InVideo: $61M ARR に 16ヶ月(80人) 

  • Midjourney: $50M ARR に 1年(11人) 

  • Mercor: $50M ARR に 2年(30人) 

  • Cal AI: $21M ARR に 10ヶ月(2人) 

  • bolt: $20M ARR に 2ヶ月(15人) 

  • Lovable: $10M ARR に 2ヶ月(15人) 

  • MAGNIFIC: $10M ARR に 1年(2人) 

  • Aragon AI: $10M ARR に 2年(9人) 

  • SeoBotAi: $1M ARR に 9ヶ月(たった1人)    

しかし、その逆はあり得ないでしょうか?

それぞれが極めてニッチで、具体的なニーズに、正確かつ丁寧に対応する個人レベルのマイクロサイズのスタートアップが無数に誕生するという世界です。

ソフトウェアがほぼ無料かつ瞬時に作れる時代では、「何年もかけて1つの大規模システムを運用する」のではなく、短期的な課題に合わせてサッと作り、不要になれば破棄するスタイルが普及する可能性があります。たとえば特定の短期イベントやキャンペーン、あるいは個人のニーズに合わせて、たった一回限りのアプリを生成➨利用➨破棄してしまうなどの用途が考えられます。

「個人が映像を創るように、個人がアプリを作る」 という感覚が広まるかもしれません。おそらく、「ソフトウェアの終焉」の本当の最終状態は、ソフトウェアエンジニアやコードのない世界ではなく、ソフトウェアが他のクリエイティブメディアと同じくらい柔軟で表現力豊かになっていく世界だと思っています。アプリケーションが単に使用するツールではなく、共有する表現、つまり個人のニーズ、視点、美学を反映したユニークな作品になるということです。

私は開発者とユーザーの境界が完全に曖昧になり、ソフトウェアはより個人のアイデアや感性を表現するキャンバスとして機能し、ユーザー側はシームレスに操作・体験すると想像していますし、ソフトウェアの可能性そのものを根本的に再考しています。わくわくする未来です。

たなにぃ 🏈 Seed | More than a VC
@TANANY_VC
Vercel CEOが語るAIの未来
・コーディングの技術は重要でなくなり、顧客思考とプロダクト構想力がより重要となる。
・エンジニアはメタスキル(高度な概念的思考力/リソースやAIの役割設定)がより求められる
・AIツールはサブスクリプションではなく、作業や成果連動型の請求に移行する…
2025/02/09 13:15
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3. ソフトウェアがコンテンツ化した未来のスタートアップアイデア

①アプリ開発のインフラレイヤー

大規模クラウドだけでなく、個々人のデバイスやエッジサーバー、さらにはブロックチェーン的なP2Pネットワークなど、多様な場所にアプリをデプロイ可能にするサービスは求められていくでしょう。アップロードのハードルが下がり、ユーザー個々が“分散型ホスティング”を行うことも増えるようになると思います。

また、決済・認証・ライセンス管理などをAIとスマートコントラクトで担えるサービスの需要も上がってくると思います。個人でも即座に有料サービスを立ち上げやすく、自分の小さなアプリを0.1ドルで配布して副業収益を得る、といった事例が日常化する可能性があります。

②マイクロソフトウェア用のプラットフォーマー

瞬間的に生成・破棄される膨大なアプリを一元管理し、検索・共有・ランク付け・収益化をサポートする“ソフトウェアSNS”のようなプラットフォームが登場する可能性もあります。「アプリ版YouTube」のような場所で、誰もが簡単にアプリをアップロードし、他人がすぐに使える・体験できる仕組みを提供するようなサービスもあり得るかもしれません。

また、特定のニッチな問題を解決する小規模アプリを展開したい個人・チーム向けに、資金調達・宣伝・ユーザーテスト・コミュニティ形成などのサポートを一括提供する事業も可能性があります。「楽しい体験」「自己実現」を提供する製品とは異なり、個人レベルでバックエンドで複雑な作業を代行してくれるサービスがもっと普及していくと感じます。

③ユーザーに合った情報を編集・絞り込みするサービス

これまでの時代は、AirbnbやUber、Spotifyのように「膨大な選択肢へのアクセス」を増やすビジネスが中心でした。それはインターネットが広く普及するまで情報へのアクセス難易度が高く、情報の民主化を推進した時代だったと言えるかと思います。

しかし、今や多くの情報は民主化し、UGCなど個人の作成するコンテンツの量も指数関数的に増加する現代において、これからは選択肢過多を整理し、ユーザーに合った情報を編集・絞り込みするサービスが重要になると思います。情報やサービスが飽和している現代では、僕自身もそうですがユーザーはむしろ「いかに選択肢を減らすか」「いかに良い情報だけに触れるか」を求めていると感じているからです。

結論

近い未来、ソフトウェアは「エンジニアが作り、ユーザーが使う」ものではなく、誰もが瞬時に生み出せる“コンテンツ”へと変貌する可能性があります。

このように、「エンジニアとユーザーの境界が完全に消える」世界では、ソフトウェアは一瞬で生まれては消える“流動的メディア”となり、同時に個人や小組織が大きなマーケットを創造する機会にもなります。そこには多くのリスク(セキュリティ、法規制、格差)も内包されますが、新時代の産業構造としては非常に魅力的な可能性を秘めていると思っています。

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